学校現場×特別支援×働き方改革について考えるブログ

現役教員にしか書けないことを・・・。

教員不足について考える

ここ数日、教員不足に関する記事が多くなりました。

現場の教員からすれば、何をいまさら…といった感じですが、現場でも人員不足の切迫感が増しているのは事実です。(教頭先生が担任をもつ、などの話はざらにある。)

今回は、教員のなり手不足とその対策について考えていきます。

 

目次

 

1 なり手不足

 教員は本当になり手不足なのか?

 教員採用試験の倍率を示した読売新聞の資料を見て考えてみましょう。

読売新聞オンライン 5/6(土) 17:20配信より


 小学校で最大12.5倍だった2000年度から、22年度は2.5倍に

 中学校で最大17.9倍だった2000年度から、22年度は4.7倍に、倍率は大きく下がっています。

 「狭き門」から「広き門」へと変わったことがうかがえるものの、受験者数自体は大きく減少していないことがわかります。

言うまでもなく、倍率は採用数に対する応募者の割合で決まるものです。団塊団塊ジュニアの世代による、年代間のアンバランスさがこの倍率の低下を生んだ(すなわち、2000年は採用数が少なく、2022年は多い)のであり、日本の社会構造の問題です。

あるいは、不景気による公務員人気、安定志向という要素も考えられます。これもまた、日本全体の問題。

 

 では、学校現場で起きている問題は何か。それは私が考える限り、二つあります。

一つは「少人数学級化」、もう一つは「何でも先生」です。

 

「少人数学級化」

 生徒指導面(問題行動や不登校対応)や学習指導面など、どれをとっても、少人数学級化は必要であり、働く側にとっても保護者にとっても児童生徒にとってもまさに「三方よし」です。これ自体は望ましい方向に進んでいます。

 2021年の法改正により、そもそも採用しなければならない人数が増えているのために、倍率の低下、すなわち「教員不足」が起きている可能性があります。

 

「何でも先生」

 もう一方は、「何でも先生」。これは、「先生が何でもやる」「何でもできる先生像」という意味です。

 タブレット端末の導入がいい例。

タブレットが壊れた」「タブレットによる生徒間のトラブル」

これらをすべて、教員にさせてしまおうと考える教育委員会や知事・市長、または、自ら進んで引き受けてしまう教員に問題があります。

生徒間のトラブルで、担任などが保護者や児童生徒の間に入って話をしなければならないのは、仕方がないとしても、タブレット端末の管理を教員がしなくてはならないのはなぜなのか。そこに合理的な理由はありません。外部委託する予算をつければ済む話です。

 

学校現場は、一事が万事、この調子。何でも教員の仕事にしてしまう教育委員会と、自ら引き受けてしまう「お人よし」の教員に問題がある。

(教員も保護者も、「何でもできる学校の先生」でありたい、そうあってほしい、と思っている節があるのは事実)

外部でできることは外部へ。これができなかった結果、今の「ブラック化」があり、教員になろうとする人を減らしているのではないか。

以下の対策1と2は、このブラック化を少しでも改善することで、結果的になり手不足の解消を目指すものです。

対策1 仕事の「外注」

現在、コロナ禍も相まって始まっているのが「外注」です。

例えば、音楽で使うリコーダーの注文は、QRコードを読み取って、保護者がそれぞれ申し込むことになった。学校で行うことは、案内文書と、出来上がったネーム入りのリコーダーの配付だけ。

それまでの、

 ・集金(過不足確認、児童生徒の出し忘れ確認も含む)

 ・申し込みが済んでいない保護者への電話

 ・業者に電話してお金を取りに来てもらう(もしくは銀行振込)

などの手間が一気に省ける。学校徴収金や清掃活動などについても、同じ要領で外注できれば、仕事量が減ります。仕事が減れば、本来教員が取り組むべき仕事に力を注げます。

そうなれば、きっと教員の「仕事としての魅力」が増すのではないでしょうか。

 

対策2 教員免許「不保持者」の採用

「外注」とは違い、「内注」のできる可能性も探っていく必要があります。

実は、教員免許が必要のない仕事は、学校にはたくさんあります。

実際に、最近増えている「スクールカウンセラー(SC)」「スクールソーシャルワーカー(SSW)」は、いい例。

学校現場や教員の考えを理解し、保護者や児童生徒と熱心に関わろうとする姿にはいつも頭が下がります。教員免許がなくても、保護者や児童生徒と適切に関わることはできるのです!

ほかにも、「採点」「入力」「印刷」「給食指導」「清掃活動」「部活動」「卒業アルバム制作」「安全点検」「修繕」「指導要録作成」などの業務は教員免許との関連が不明であり、必ずしも教員が担う必要はありません。

しかし、個人情報などの兼ね合いから、外注が不適切な場合もあるだろうし、現場でこそ、頼みたい仕事もあります。そこで、教員免許を持たない人を学校現場に採用することが、効果的であると考えます。

それは、アルバイトの高校生でもよいし、教員を目指す大学生でも構わない。退職した元教員でもよいし、元保護者でもよい。とにかく、教員免許保持者だけに絞らず、多様な人材による「学校運営」が、結果的によい教育を創ることになるのではないか。それにより、遠回りではあるが、教員不足が解消していくのではないか。

働く側にとっても、児童生徒や保護者にとっても、学校がより魅力的な場所になることを切に願っています。

(過去の記事「学校に受付係を」も参照してください。)